11月8日のNTTの決算発表で、来年4月の消費税増税で公衆電話の通話時間を短くすることが明らかにされた。1円単位で値上げするのは、機械の交換が必要になり費用がかかることから、通話時間短縮で、消費税分の回収を検討しているということだ。

しかし、携帯電話全盛期の現代においては、影響を受ける人はほとんどいないと思われることから、大した話題になっていないようだ。

減り続ける公衆電話の設置台数


ケータイを使っている限りは全く意識しない公衆電話だが、町のあちこちをよく見ると、その設置台数が減っていることに気付かないだろうか?

筆者は、「以前は確かこの辺りに公衆電話があったのに」ということにふと気づくことがある。そこで現在の公衆電話の設置台数がどれくらいなのか気になったので調べてみた。統計局の平成25年の情報通信白書によれば、2013年3月末の公衆電話の設置台数は、全国で約21万台ということだ。2002年3月末には68万台が設置されていたので、最近11年の間に3分の2の公衆電話が姿を消したことになる。

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これだけ大幅に設置台数が減っていても、話題にならないということは、その影響を受けている人はほとんどいないのであろう。そう言えば、以前はICデータ型の公衆電話があったが、2006年3月末でサービス終了となっていたようだ。将来的には、ICデータ型に全部変わるのではないかと思ったものだが、公衆電話の利用者自体が減っているので、設置台数を増やそうとはしなかったのだろう。

また、上のグラフを見ればわかるが、デジタル回線よりもアナログ回線の方が多い。アナログ回線の方が長い期間使用されているだろうから減少台数が多くなっているようだ。グラフを見る限りでは、積極的にアナログ回線からデジタル回線に変えていこうという意思はなさそうに思える。

10円での通話時間は何秒になるのか?


設置台数がこれだけ減少しているのに、消費税が上がったら10円で何秒話せるのかを気にする人も少ないだろうが、一応、予想しておく。ちなみに現在の通話時間は、昼間だと10円で60秒だ。

単純に考えると、消費税が5%から8%に上がれば、それに比例して通話時間が短くなるように思える。だから、まずは、これを前提に試算してみよう。

10円のうち消費税5%を差し引いた税抜金額は以下のようになる。

①10円の税抜金額(5%)=10円/1.05=9.5238095238円

次に消費税5%の場合の1円当たりの通話時間を計算する。

②1円当たりの通話時間=60秒/9.5238095238円=6.3秒

そして、10円のうち消費税8%を差し引いた税抜金額を計算する。

③10円の税抜金額(8%)=10円/1.08=9.25925925925円

②×③より消費税8%になった時の通話時間は以下の秒数となる。

消費税8%の場合の通話時間=58.33333333秒

ということで、2014年4月からの通話時間は10円で58秒となるはずだが、おそらくこのようにはならないだろう。

距離段階ごとに値上げされるのではないだろうか


今回のように消費税が上がった1997年には、距離段階ごとに通話時間の短縮が行われた。

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1997年に消費税が3%から5%に上がった時は、区域内は、昼間と夜間だと60秒、深夜早朝だと80円のまま据え置かれた。通話距離が長くなるにつれて通話時間を短縮し、これで消費税増分を回収していたのだ。おそらく、2014年4月の通話時間短縮も前回と同じように距離段階ごとの短縮になるのではないだろうか?

今回、公衆電話の通話時間について調べたわけだが、そう言えば、以前は10円で3分間話せていたことを思い出した。それで、いつから60秒に短縮されたのかを調べてみた。すると、以下のサイトに公共料金の推移が掲載されていた。

公共料金の推移

上記サイトによると、1993年9月末までは10円で3分話せていたが、同年10月から一気に半分の90秒しか通話できなくなった。さらに半年後の1994年4月から10円で60秒となり、1997年の消費税アップ時に現在の通話時間となった。

これを見ると、どうも携帯電話の加入者数を増やすために公衆電話の通話時間を短縮したように思えてしまう。1993年から94年と言えば、携帯電話が徐々に普及し始めた頃だ。公衆電話の料金を上げれば、携帯電話の加入者数が増やせるという目論見があったのかもしれない。

テレホンカードの売上はどう会計処理されているのか?


こうやって公衆電話のことを調べていくと、今度は、テレホンカードの売上が気になってきたので、さらに深く調べてみた。

公衆電話が減少し、携帯電話が普及していることから、テレホンカードの売り上げは年々減っていることが予測される。しかし、NTT東日本と西日本の損益計算書からは、営業収益の詳しい内訳までは記載されていないので、テレホンカードの売上はまったくわからない。

しかし、テレホンカードの売上の増減の傾向は、貸借対照表の負債に計上されている未使用テレホンカード引当金残高から推測することが可能だ。以下の表は、NTT東と西の12年3月末と13年3月末の貸借対照表に計上されていた未使用テレホンカード引当金残高である。

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NTT東は、12年3月末が142億円、13年3月末が126億円。これに対してNTT西は、12年3月末が134億円、13年3月末が119億円となっている。どちらも、未使用テレホンカード引当金残高が減少傾向にあるので、テレホンカードの売上は、やはり、年々減っているのだろう。

ところで、この未使用テレホンカード引当金とは何なのだろうか?NTT東の決算書の注記には以下のように記載されている。

当社が発行するテレホンカードの将来の使用に備えるため、テレホンカードの未使用分について、過去の実績に基づく将来の使用見込額を計上することとしております。


これは、つまり、テレホンカードは販売した時に全額売上計上し、過去の実績から、未使用部分のうち使用の可能性が高いと判断された金額を引当金として負債に計上するとともに費用処理しているということのようだ。

例えば、テレホンカードを500円で販売し、そのうち400円が使用され100円が未使用だったとしよう。この未使用分100円は全額将来において使用されることはなく、70円だけが使用される見込みだった場合、売上は500円、引当金は70円、利益は430円となる。

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さらに詳しく知りたかったので、NTTグループ全体の連結財務諸表も確認した。しかし、ここには、未使用テレホンカード引当金は負債に計上されていなかった。これはどういうことかと思い、有価証券報告書の「重要な会計方針の要約」に目を通した。すると、「収益の認識」のところに以下の一文を発見した。

NTTグループが販売したテレホンカードのうち、今後使用が見込まれる分について、収益を繰り延べており、実際に使用された時点で収益として認識しております。今後使用が見込まれる分については、過去の使用実績と経験に基づき算定しております。


どうやら、NTTグループ全体の連結財務諸表とNTT東と西の個別の財務諸表では、会計処理が違うようだ。

先の例でいうと、連結上は500円のテレホンカードの販売額のうち、将来の使用が見込まれる70円を差し引いた430円を売上としているということだ。

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どちらかというと、NTTグループ全体の連結財務諸表の方が正しい会計処理と言える。ただ、厳密には、テレホンカードの販売時は前受金として負債に計上し、使用された分を売上に計上すべきだろう。

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しかし、このように厳密に会計処理するのは、実務的に非常に手間がかかる。特に何かの記念に作られたテレホンカードは使用されることはないだろうし、加えてテレホンカードには今のところ期限もないので、いつまでも販売額が売上に計上されないといった不具合が発生する。

だから、簡便な会計処理を選択したのであろう。

ユニバーサルサービス料も下がっている


さて、ほとんど使用する人がいないのなら、公衆電話を撤去した方が、NTTにとっては儲かるのではないかと思う方もいるだろう。しかし、公衆電話の維持費というのは、実は、固定電話でも携帯電話でも、何でもいいから電話番号を持っている人が負担しているのが現状だ。

公衆電話は、災害時など緊急の通信手段として必要だから、一定数は残しておかなければならない。しかし、個々の公衆電話が通話料だけで維持費を稼ぐのは難しいので、事業者にユニバーサルサービス料として、その維持費を負担させているのだ。

ユニバーサルサービス料については、事業者が直接負担するか加入者に負担させるかは、事業者が決めることができ、多くの場合、利用者が負担している。携帯電話の利用明細に目を通せば、ユニバーサルサービス料として3円がきっと差し引かれているはずだ。以前は、これよりも高かったが5円程度だったと記憶している。


日本は地震や台風など災害の多い国なので、ユニバーサルサービス料を今の2倍の6円に上げて、もっと公衆電話の数を確保しておいた方が良いと思うのだが、どうだろうか。
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