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アベノミクス効果もあり、2013年は、まずまずの景気回復と言える。そういった景気の好転から来年の春闘では、ベースアップ(ベア)の期待が膨らんでいる。

12月9日付の毎日新聞では金属労協が1%以上のベースアップを要求する方針であることが報じられた。また、7日付の産経新聞では、電機連合が4,000円以上のベースアップを要求する方針ということだ。他にも各労働組合が春闘でベースアップを要求するようで、賃上げの期待が高まっている。

賃金や給料が上がることで消費の拡大が期待できる


来年の春闘で、ベースアップの要求が認められれば、労働者の収入が増えることになる。収入が増えれば、個人消費の拡大を期待できることから、消費税率引き上げによる悪影響を小さくすることができるだろう。だから、景気を後退させないためにもベースアップは重要だと言える。

ベースアップというのは、基本給の底上げのことだ。例えば、基本給20万円の従業員がいたとしよう。仮に10%のベースアップが実現すれば、基本給が22万円となる。一気に10%も基本給が上がるということは考えにくいが、1%でも基本給が上がれば、消費税率引き上げ分くらいならカバーできるのではないだろうか。

経営陣には、ベースアップの要求をのんでほしいところだ。

しかし、基本給の引き上げというのは、企業にとっては大きな決断となる。その理由のひとつに財務面に与える長期的な影響がある。

ベースアップは将来の退職金支給額を跳ね上げる


多くの企業では、従業員の退職時に退職金が支給される。支給方法は一時金であったり年金であったりと様々だが、支給額の計算に基本給が使われることが多い。

退職金や年金の計算は複雑で、その道のプロによって計算されるが、簡単に説明すると、退職時の基本給に一定の乗率を掛けた値が、退職金支給額となる。退職一時金を採用している企業なら、従業員が1人退職すると、その時に現金を支給することになるが、費用の計上時期は退職時ではない。

例えば、従業員が40年勤続して退職した場合、企業は毎年40分の1ずつ将来の退職金支給に備えて費用計上する。それと同時に未払いの退職金が貸借対照表の負債の部に計上される。連結財務諸表の場合なら「退職給付に係る負債」、個別財務諸表なら「退職給付引当金」という名称で表示されている。

仮に現在、勤続年数10年の従業員がいたとしよう。その従業員の将来の退職金に備えて引き当てる毎年の金額が10万円だった場合、負債として計上される退職金の未払い分は100万円となる。

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もしも、ベースアップが実施され基本給が引き上げられた影響により、退職金の支給額が10%上がったと仮定しよう。そうすると、毎年の退職金の引当額が10万円から11万円に変更されるから、過去10年間の退職金の未払い額が110万円となる。そのため、すでに負債に計上している100万円との差額10万円を追加で負債計上しなければならない。

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以後は、従業員が退職するまで、毎年11万円ずつ負債額が増えていくことになる。

毎年の引当額が1万円増えるだけなら大した問題ではないと思うだろうが、もしも従業員が100人いた場合には、その影響は100倍だ。しかもベースアップが実施された時には、過去の引当不足が一気に負債に加算されることになる。仮に上の従業員と同条件の従業員が100人いた場合、引当不足は1,000万円となるのだ。

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現在、個別財務諸表しか作成していない企業の場合は、一時に1,000万円の引当不足を負債に計上する必要はない。予想される退職時から現在までの平均的な期間(平均残存勤務期間)以内の一定の年数で按分した額を少しずつ費用計上するとともに負債を増やしていけばよい。仮に平均残存勤務期間が10年なら、毎年100万円ずつ費用計上し、負債を増やせばいいわけだ。

しかし、連結財務諸表の場合は、費用計上は平均残存勤務期間以内の一定年数で少しずつ行えばいいが、負債は1,000万円全額計上しなければならない。

このように企業の財務面から見ると、ベースアップは将来の退職金支給額を跳ね上げる(ベアハネ)ことから、経営陣としては慎重にならざるを得ない。最近では、ベアハネが起こらないように退職金規定を変更している企業もあるが、基本給を前提として退職金を計算している企業の場合は、労組のベースアップ要求に応じにくいだろう。

賃上げと消費拡大はどちらが先か


従業員の立場からすると、ベースアップなどによる賃上げがあれば消費が拡大し、企業の業績が上がると主張するだろう。反対に企業の立場からは、業績が上がれば、その分賃金に反映させることができるから、それまで我慢して欲しいと思っているはずだ。

どちらの主張ももっともなことだ。これは、ニワトリが先か卵が先かという議論と同じように思う。

しかし、このような議論をしていても景気が良くなることはないだろう。従業員が積極的にお金を使って消費を拡大するか、企業が賃上げを実施して従業員が消費しやすい環境を作るかのどちらかだ。

筆者は、企業が先に賃上げを実施することが重要だと考えている。従業員一人だけが、がんばってお金を使ったところで意味がない。大金を持っている企業が、賃金や給料を増やして多くの従業員に支給した方が、消費が拡大するだろう。

しかし、ベースアップは企業財務に長期的な影響を及ぼすものなので、まだ時期的に早いだろう。筆者は、今は、ベースアップではなく、賞与や何らかの手当の支給によって従業員の収入を増やすのが良いのではないかと考えている。安倍総理の任期中は景気動向の見極め期間だと思うのだが、どうだろうか。
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