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4月15日付の朝日新聞で、被監査会社の不正を見たと回答した公認会計士が約半数に上ることが報じられた。

これは、14日に日本公認会計士協会が公表したプレスリリースが出所で、会員登録して10年以上の公認会計士約1万3千人に実施したアンケート結果だ。回答したのは約1,000人ということなので、回答率は高いとは言えない。

経営者の関与が疑われるものが多い


公認会計士が行っている監査業務の内容は、企業が公表する財務諸表に対する適正性意見の表明だ。

財務諸表とは簡単にいうと決算書のことだが、公認会計士は、この決算書が正しく作成されているかどうかをチェックし、その内容に問題がない、もしくは問題があることを監査報告書に記載して投資家に公表している。多くの場合、問題がないことを示す適正意見となるが、まれに不適正ということもある。


朝日新聞で報じられているアンケート結果によると、過去10年間に一度でも不正を見つけた経験があるのは、全体の48.8%だ。

不正の内容は、資産が実在していないのにあるように偽装するもの、外部企業と協力して売上を水増しするものが目立ったようだ。従業員の資産の流用や横領と考えられるものも中にはあったようだが、不正の多くは、管理職や経営陣の関与が疑われるもので、会社ぐるみで行われていたと考えられる。

なお、従業員だけの不正と考えられるものは14.5%しかなかった。

被監査会社が不正を指摘され、決算を修正した割合は、全体の約3分の2だったようだが、中には、監査契約を解除されたり、担当していた公認会計士が監査からはずれたりした事例も6.6%あった。


不正の具体的な例


今回の日本公認会計士協会が実施したアンケートは、公認会計士が不正を見たかどうかを調査したものだが、具体的な事例は、報道内容からはわからない。

そこで、筆者が、考えられる不正の事例を以下に列挙する。

預かり売上の計上


外部の企業と協力して売上の水増しをする例としては、預かり売上の計上がある。

売上を計上するためには、商品やサービスを顧客に引き渡したこと、その対価を現金または現金同等物で受領したことという要件を満たさなければならない。

預かり売上というのは、顧客が近いうちに商品を引き取る事を約束しているが、未だ出荷が行われていない状態にある商品を売上計上することだ。顧客に向けて出荷されていない以上、売上計上できないのだが、顧客企業と協力して預かり証を作るなどして、いかにも顧客が商品を引き取る意思があると見せる。

多くの場合は、決算日後に出荷されるから、最終的に商品が売れるのだが、その売上は、当期ではなく来期に計上しなければならないものなので、売上早期計上という不正を行っていることになる。


滞留在庫の評価減を行わない


数年間、まったく売れたことがない商品が倉庫に眠っている場合、滞留在庫として、商品原価を引き下げなければならない。

原価の引き下げは、処分可能な価額まで行う必要がある。たとえば、商品原価が100円でも、市場では10円でしか売ることができないのであれば、差額90円を損失として計上しなければならない。

しかし、損失計上を嫌って、商品の評価減を行わない企業もある。こういったことも粉飾決算となるので、不正と言うことができる。


回収不能な債権に貸倒引当金を設定しない


得意先企業が、開店休業状態にあったり、社長が夜逃げしたりした場合、その企業に対する債権の回収可能性は著しく低下する。

企業内にめぼしい財産がなければ、1円も回収できないことさえある。こういった事態が起こったときには、当該債権に対して、回収可能額まで貸倒引当金を設定する必要がある。たとえば、100万円の債権のうち、20万円しか回収できないのであれば、差額80万円に貸倒引当金を設定する。貸倒引当金が設定されると、企業の資産は80万円少なくなり、利益も80万円減少する。


不正への対応


上記のような不正を発見した場合、公認会計士は、まず、被監査会社に財務諸表の修正を依頼することになる。

しかし、財務諸表の修正を強制することはできない。なぜなら、公認会計士の責任は財務諸表が適正かどうか意見を表明することであり、財務諸表の作成責任を負っていないからだ。もしも、公認会計士が財務諸表の修正を強制すると、公認会計士が財務諸表の作成をしたことになる。

本来、債務諸表の作成責任は被監査会社にあるので、その責任を公認会計士に負わすことはできない。また、公認会計士に財務諸表の作成責任を負わすと、財務諸表の作成も監査も同一人が行うことになる。簡単にいうと、チェックする人間とチェックされる人間が同じになるということだ。そのような制度が意味をなさないことは、容易に想像できるだろう。


公認会計士の修正勧告に被監査会社が応じなかった場合、公認会計士は、その財務諸表が正しく作成されていないということを監査報告書を通して社会に公表する。投資家は、その監査報告書を見れば、財務諸表に偽りがあることを理解できるので、当該会社の株式や社債に投資するのは危険だと判断することができる。


公認会計士と被監査会社の駆け引き


企業が粉飾決算をするのは、業績が好調だと見せかけることが理由だ。

そうしなければ、銀行から借り入れができなくなるし、株価も下がってしまう。そうなると、経営者は責任をとらなければならないので、業績が悪化した時には、責任を回避するために実際よりも、経営成績や財政状態を良く見せたくなる。


業績が悪化している企業の経営陣は、公認会計士にばれないように存在しない資産を実在するかのように見せかけたり、売上や利益を水増ししようとしたくなる。しかし、そのようなことが公認会計士に発見されれば、監査報告書に不適正と記載されてしまう。

仮に公認会計士が、不正を発見した場合、被監査会社の経営陣は、その不正を見逃してもらおうと説得を試みる。倒産した会社に対する債権に貸倒引当金を設定していない場合には、その会社の社長の個人資産で穴埋めしてもらう契約となっているから回収可能性に問題はないと言ったりするわけだ。もちろん、その場合には、倒産した会社の社長との間に損失の穴埋めをすることを約した契約が取り交わされていることを証明する必要があるため、契約書を偽造したりする。


滞留在庫については、決算日までに出荷されたように帳簿に記入し、決算日が過ぎてから返品処理をすることがある。しかし、公認会計士に見破られれば、決算日前に計上した売上を取り消す必要があるし、在庫が滞留している事実も気付かれてしまうので、商品の評価減を実施しなければならない。


公認会計士が不正に気付いた時、被監査会社の経営陣が、水戸黄門が印籠を出した時の悪代官のように神妙になれば良いのだが、そうならないこともある。

それが、監査契約の解除だったり、担当者を代えるように要求する行為だ。公認会計士が毅然とした対応をとれば問題ないのだが、小規模な事務所の場合は、監査契約の解除を嫌って、被監査会社の要求に屈する危険がある。しかし、日本公認会計士協会が、公認会計士の監査内容をチェックしているので、もしそのような行為が発覚すれば、厳しい処分を受けることになる。そのため、公認会計士が不正に関与する危険性は非常に低いものとなっているが、絶対に不正に関与しないとも言い切れないのが現実だ。


今回の公認会計士に対するアンケート調査は、控えめな結果になっているのではないかと筆者は考えている。

小さな不正やグレーゾーンのものも入れると、もっと多くの公認会計士が不正に遭遇していると思うのだが、実際のところはわからない。

それでも、約半数の公認会計士が不正を見たと回答していることから、公認会計士の監査は十分機能しているのではないだろうか。
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