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4月17日付の朝日新聞によると、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、アメリカが日本に豚肉の差額関税制度の撤廃を求めていることが明らかになったようだ。

輸入豚肉に関税が課せられるのは、国内の養豚業者を保護するためだ。それは、ご存知の方も多いだろうが、豚肉にかかる関税は、差額関税といって通常の関税とは異なっており、問題点が指摘されることがしばしばある。

輸入豚肉の差額関税の仕組み


海外から輸入される豚肉にかかる差額関税の仕組みは、簡単にいうと以下のようになっている。

まず、豚肉1kg当たり546.53円の基準価格が設定される。この基準価格は、国内の価格を参考に決定したもので、例えば、100円/kgで輸入してきた豚肉については、取引価格が546.53円になるように差額446.53円の関税がかけられる。

次に基準価格よりも高い輸入豚肉に対しては、一律4.3%の関税率が適用される。

差額関税制度が存在することによって、海外から安い豚肉が入ってきても国内では546.53円以上で取引されるわけだから、国内の養豚業者は、安価な豚肉が海外から入ってきても、価格競争にさらされることはない。

これに対して、牛肉の場合は、値段に関わらず関税率が一律38.5%なので、低価格で牛肉が輸入されると、国産牛肉は海外の安価な牛肉と価格競争を強いられることになる。

例えば、100円/kgの外国産牛肉の場合、関税を上乗せした価格は、138円/kgとなるので、国産牛肉もこのあたりまで値段を下げなければ、売上が厳しくなる。50円/kgで牛肉が輸入されれば、関税がかかっても69円/kgなので、国産牛肉の値段をさらに下げなければ競争に負けてしまうわけだ。


このように牛肉と比較すると、豚肉は546.53円の基準価格が設定されているので、それより安い価格の外国産豚肉が国内で流通することはなく、国内の養豚業者は、過酷な価格競争にさらされることはない。

これが、差額関税制度の利点と考えられる。


基準価格を上回る場合の関税率を引き下げ


上記のような利点があることから、日本は、国内の養豚業者を保護するために差額関税制度を守りたい考えだ。

これに対して、アメリカは、差額関税制度があると、どんなにアメリカの養豚業者がコストダウンの努力をしたとしても、日本では、基準価格546.53円/kgを下回る価格で取引することができないので、撤廃を要求している。

アメリカの要求に対して、日本は、基準価格を上回る場合の関税率4.3%を2.2%に下げる譲歩案を検討しているようだが、これではアメリカは納得しないだろう。高級豚肉が安価な豚肉よりも、よく売れるのであれば、アメリカもこの譲歩案を受け入れるかもしれない。しかし、現実には、安い豚肉の方がよく売れるのだから、差額関税制度の撤廃や基準価格を今よりも引き下げることを要求するのは当たり前だ。


差額関税制度の存在は日本の消費者にも不利益


国内の養豚業者を保護するための差額関税制度は、海外の養豚業者にとって不利になることは明らかだが、国内の消費者にも不利益がある。

単純に考えれば、100円/kgの豚肉と300円/kgの豚肉を比較すれば、後者の方が品質が良く美味しいはずだ。必ずしも値段の高い豚肉が美味とは限らないが、同じ養豚業者が飼育しているのなら、値段の高い豚肉により手間と費用をかけていると考えられるので、品質は安価な豚肉よりも良いと考えられる。

ところが、差額関税制度が存在するために、手間暇かけた豚肉だろうがそうでない豚肉だろうが、一律546.53円/kgの基準価格で取引されるのだから、国内消費者は、品質に関わらず、同じ値段で輸入豚肉を買わされることになるのだ。


差額関税制度は実は国内養豚業者を保護していない


過去にも以下の記事で、差額関税制度が国内の養豚業者を保護する機能を果たしていないということを指摘したが、今一度、この点について考えてみよう。


そもそも輸入豚肉の差額関税制度は、枝肉取引に対応したものだ。枝肉取引とは、大雑把にいうと、豚1頭をまるまる取引することだ。

仮に枝肉相場が安い場合には、輸入豚肉に基準価格まで関税がかけられるので、国内で流通する豚肉の価格が著しく安くなることはない。反対に枝肉相場が高い時は、低率の関税がかけられるので、流通価格の高騰を抑えることができる。これが、差額関税制度の狙いなのだが、現実にはそうなっていないようだ。


NPO法人の「食肉の生産と流通を考える会」が2013年4月12日に公表した「TPPの進展に伴い予測される豚肉差額関税撤廃と我国の養豚産業の課題」によれば、上記の建前とは全く逆になっているそうだ。

その理由は、国際的な豚肉の取引が枝肉主体ではなく、部分肉主体となっているからだ。

枝肉取引であれば、ヒレ、ロース、ウデ、モモと様々な部位をまとめて取引することになる。そのため、枝肉主体の取引であれば、差額関税制度が適用されたとしても、高級部位であるヒレも加工食品に使われる安価なウデやモモも同じ関税率が適用される。だから、高級部位のヒレは高い価格で流通するし、加工用のウデやモモは安い価格で流通することになる。

ところが、部分肉主体の取引では、ヒレだけを輸入したり、加工用のウデだけを輸入したりするので、本来あるべき価格で流通しなくなるのだ。ヒレのような高級部位は、高い価格で輸入されるから基準価格を超えるので4.3%の低い関税率が適用されることになる。反対にウデのような加工用に使われる豚肉は、安い価格で輸入されるから関税率の高い差額関税が適用されることになる。

すなわち、ソーセージやハムなどの加工用に使われるウデやモモなどは、本来、安価に手に入る部位なのだが、部分肉取引に対しても差額関税制度が適用されると、高い関税率が適用されるので、国内加工業者が仕入れる原材料価格が高騰するのだ。逆にヒレのような高級部位は、低関税率となるので、投げ売り状態となり、国内の養豚業者は高級部位に関して価格競争を強いられる。

これでは、国内の養豚業者を保護する目的で作られたはずの差額関税制度が、逆に彼らを苦境に陥らせてしまう。


このような逆転現象が起こっていると、国内の養豚業者だけでなく食肉加工業者も、海外から入ってくるハムやソーセージなどの加工食品と価格競争しなければならなくなるはずだ。

差額関税制度のせいで、海外から安い豚肉を仕入れて加工できないのであるから、海外メーカーが安い豚肉を仕入れて加工した低価格のハムなどが国内に入ってくれば、国内メーカーが大きな打撃を受けることは容易に想像できる。


現在の豚肉に関する差額関税制度は、できるだけ早く改正すべきであろう。

しかし、今まで国内で欠陥が指摘されてきたにもかかわらず、差額関税制度が長年にわたり維持されてきたのだから、TPP交渉を通してアメリカから圧力がかからなければ、改正されないのかもしれない。
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